はじめに
こんにちは。ひなたです。
自宅付近の道路で通行人の増加が見込まれることになり、防犯目的で監視カメラの導入を検討することにしました。
カメラを設置すること自体は決まっていたんですが、問題は「どう実現するか」です。 市販の防犯カメラセットを買うのか、それともNASを活用した録画システムを構築するのか。
今回は、機種選定から導入方法の検討まで、思考プロセスを含めて記事にしたいと思います。
設置環境と要件の整理
まず、設置環境と必要な要件を整理しました。
設置環境
- 設置場所: 屋外3〜4箇所
- 接続方法: 無線LAN(LANケーブル配線が難しい)
- 既存環境: Synology NAS(DS923+)あり
必須要件
- 防犯目的での録画(リアルタイム監視は重視しない)
- 夜間撮影対応(赤外線)
- 画質: 人物を識別できる程度(4MP以上)
- 予算: 1台あたり3万円以内
あると嬉しい機能
- 動体検知
- SDカードへのローカル録画(NAS録画の補助)
- 専用SSID(セキュリティ分離)
録画方式の比較検討
防犯カメラシステムを構築する方法は、大きく分けて2つあります。
方式1: NVR専用機を使う
NVR(Network Video Recorder)という、カメラ映像を録画するための専用機器を使う方法です。
タイプA: メーカー純正NVR
TP-LINK VIGI純正NVRの例
- VIGI純正カメラ専用
- 8ch/16ch対応
- HDD別売
- 価格: 本体3〜4万円
メリット
- 設定が簡単(同一メーカーなので)
- メーカーサポートが受けられる
デメリット
- 他社カメラは使えない
- 拡張性が低い(そのメーカーの製品に縛られる)
タイプB: 汎用ONVIF対応NVR
Hikvision / Dahua NVRの例
- ONVIF対応で他社カメラも使える
- 業務用品質
- 価格: 4ch 3万円〜、8ch 5万円〜
メリット
- 多様なカメラに対応
- 業務用品質で安定性が高い
デメリット
- 設定がやや複雑
- 価格が高め
タイプC: オールインワンシステム
UniFi Protectの例
- Ubiquiti製
- Dream Machine Pro + UniFiカメラ
- 初期投資: 10万円〜
メリット
- 統合管理UI(ネットワーク機器も含めて一元管理)
- 拡張性が高い
- プロ仕様の品質
デメリット
- 初期コストが高い
- UniFi製品に縛られる
方式2: NASを録画機器として使う
Synology NASには「Surveillance Station」という監視カメラ管理機能があります。 これを使えば、NASをNVRとして活用できます。
Synology Surveillance Stationの特徴
- ONVIF対応カメラを幅広くサポート
- 無料ライセンス2台分が付属
- 追加ライセンスは有料(1台約1.1万円)
- AI機能(人物検知、顔認識など)も利用可能
- スマホアプリ(DS cam)で遠隔確認
メリット
- 既存NASを活用できる(初期コスト削減)
- 拡張性が高い(最大40台まで、AI機能追加など)
- 他用途との統合(ファイルサーバー、バックアップなど)
- 高機能(タイムラプス、スナップショット、スマート検索など)
デメリット
- 初期設定がやや複雑(ネットワーク設計が必要)
- NAS負荷が増加(常時録画でCPU/メモリ使用)
- Synology依存(NASが壊れると全滅)
なぜNAS録画方式を選んだか
比較した結果、私はNAS録画方式を選びました。
決め手となったポイント
-
既存NAS活用で初期コスト抑制
- NVRを新規購入するより安い
- すでにDS923+があるので追加投資が少ない
-
拡張性の高さ
- 将来的に8台まで増やせる
- AI機能なども後から追加できる
-
他用途との統合
- ファイルサーバー、Docker、Zabbix監視なども同じNASで
- 専用機だと録画しかできない
-
Surveillance Stationの高機能
- タイムラプス、スマート検索、動体検知など
- 業務用NVRに匹敵する機能
-
管理の一元化
- すでにNASを使っているので、管理対象が増えない
- 別途NVRを管理する手間がない
Synology Surveillance Stationについて
ここで、Synology Surveillance Stationについて少し詳しく説明します。
機能概要
- 最大40台のカメラ管理(ライセンス次第)
- 24時間連続録画
- 動体検知録画(容量節約)
- タイムラプス動画作成
- スマホアプリ対応(iOS/Android)
- AI機能(人物検知、顔認識、ナンバープレート認識など)
ライセンス体系
Synology NASには、無料で2台分のカメラライセンスが付属しています。
3台目以降は、追加ライセンスの購入が必要です。
- 1ライセンス: 約1.1万円
- 4ライセンスパック: 約3.5万円
- 8ライセンスパック: 約6万円
今回は3〜4台の設置を予定しているので、1〜2ライセンスの追加購入が必要になります。
対応カメラ
Surveillance Stationは、以下のカメラに対応しています。
- ONVIF対応カメラ(汎用規格、選択肢が多い)
- Synology純正カメラ(連携が完璧だが高価)
- その他対応カメラ(互換性リストに掲載)
互換性リストは、Synologyの公式サイトで確認できます。 https://www.synology.com/ja-jp/compatibility/camera
今回は、予算の都合上ONVIF対応の汎用カメラを選ぶことにしました。
カメラ選定のプロセス
候補メーカーの比較
予算3万円以内で、屋外無線対応のカメラをいくつか比較しました。
TP-LINK VIGI
VIGI C340W
- 4MP(2560×1440)解像度
- 無線LAN対応
- IP67防水(屋外対応)
- 夜間撮影(赤外線30m)
- ONVIF対応
- 価格: 約2.2万円
評価
- ビジネス向けで品質が安定している
- 価格も手頃
- ONVIF対応で互換性◎
Reolink
RLC-510WA / 511WA
- 5MP(より高解像度)
- 無線LAN対応
- 屋外対応
- Synology互換性リスト掲載多数
- 価格: 2〜2.5万円
評価
- 実績豊富
- 高解像度
- ただし、日本での入手性がやや悪い
IMOU
Bullet 2C / Cruiser
- 無線LAN対応
- 屋外対応
- 価格: 1〜2万円台
評価
- コスパ良い
- ただし、Synology互換性は要確認
Hikvision
各種モデル
- 業務用カメラの定番
- 高品質
- 価格: 3万円以上が多い
評価
- 品質は間違いない
- ただし予算オーバー
最終選定: TP-LINK VIGI C340W
比較検討の結果、TP-LINK VIGI C340Wを選びました。
選定理由
- 予算内に収まる(約2.2万円)
- ビジネス向けで品質が安定
- ONVIF対応で互換性が高い
- スペックが十分(4MP、赤外線30m、IP67)
- 入手性が良い(国内でも普通に買える)
ReolinkはスペックがVIGIより少し上ですが、日本での入手性がイマイチでした。 Amazonで在庫切れだったり、発送に時間がかかったりするので、今回は見送りました。
ネットワーク構成の検討
カメラを無線LANで接続するにあたって、帯域やネットワーク設計を検討しました。
帯域要件の計算
まず、カメラがどれくらいの帯域を使うのか計算してみます。
VIGI C340Wの帯域使用量
公式スペックから:
- 解像度: 4MP(2560×1440)
- フレームレート: 最大25fps
- ビットレート:
- メイン: 最大8192 Kbps(約8Mbps)
- サブ: 最大2048 Kbps(約2Mbps)
実際の運用では:
- 通常画質設定: 4〜6Mbps程度
- 高画質設定: 6〜8Mbps程度
- 動きが多い場合: 瞬間的に最大8Mbpsまで上昇
4台同時稼働時の帯域
保守的な見積もり(平均6Mbps/台):
6Mbps × 4台 = 24Mbps
ピーク時(全カメラで動体検知+高画質):
8Mbps × 4台 = 32Mbps
余裕を見た設計値:
40〜50Mbps確保が理想
2.4GHz帯 vs 5GHz帯
無線LANには、2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯があります。
2.4GHz帯
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 理論値 | 300Mbps(802.11n) |
| 実効値 | 50〜100Mbps |
| 特徴 | 電波が遠くまで届く、壁を越えやすい |
| 欠点 | 電波干渉が多い(近隣Wi-Fi、電子レンジなど) |
5GHz帯
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 理論値 | 867Mbps〜(802.11ac以上) |
| 実効値 | 300〜500Mbps |
| 特徴 | 電波干渉が少ない、高速 |
| 欠点 | 電波が届きにくい、壁に弱い |
2.4GHz帯での懸念点
当初、カメラ用に2.4GHz帯の専用SSIDを用意しようと考えていました。
理由
- 屋外まで電波が届きやすい
- 既存APから30m離れているので、5GHzだと厳しそう
でも、計算してみると……
必要帯域: 40〜50Mbps(4台、余裕見込み) 実効スループット: 30〜80Mbps(環境依存が大きい)
問題点
- ギリギリすぎる(余裕がない)
- 他デバイスとの競合(同じSSIDに他の機器がいると更に厳しい)
- 電波状況に左右される(雨天、近隣干渉など)
- 将来の増設ができない
理論的には動くかもしれないけど、安定運用にはリスクがあるという結論になりました。
実機検証してみる方針
ただ、理論上厳しいとはいえ、実際に試してみないと分からない部分もあります。
現状の電波状況
- 既存AP: NEC Aterm WX7800T8
- 設置予定場所までの距離: 約30m(直線)
- 障害物: 壁1枚
- 2.4GHz帯: 比較的強い電波が届いている
- 5GHz帯: 減衰しているが届いている
まずは2.4GHz帯で実機検証してみて、問題があれば以下を検討します。
対策案
- 5GHz帯に切り替え
- カメラ専用の屋外用AP追加(TP-LINK EAP610-Outdoorなど)
- 画質設定を下げて帯域を抑える
実機検証の結果は、また別の記事で報告したいと思います。
VLAN配置とSSID設計
ネットワークのセキュリティ分離も考慮しました。
VLAN配置
- 既存の生活用セグメントに収容
- 新規VLAN払い出しはしない(管理を複雑にしたくない)
SSID設計
- カメラ専用SSIDを作成
- 2.4GHz帯専用として設定
専用SSIDにすることで、他のデバイスとの帯域競合を避けられます。
コスト試算
最後に、実際にどれくらいのコストがかかるのか試算しました。
NAS録画方式のコスト(4台構成)
| 項目 | 単価 | 数量 | 小計 |
|---|---|---|---|
| カメラ(VIGI C340W) | 2.2万円 | 4台 | 8.8万円 |
| 追加ライセンス | 1.1万円 | 2 | 2.2万円 |
| iPad(表示用) | 6万円 | 1台 | 6万円 |
| 合計 | - | - | 17万円 |
※NAS、ネットワーク機器は既存資産なので除外
3台構成の場合
| 項目 | 単価 | 数量 | 小計 |
|---|---|---|---|
| カメラ(VIGI C340W) | 2.2万円 | 3台 | 6.6万円 |
| 追加ライセンス | 1.1万円 | 1 | 1.1万円 |
| iPad(表示用) | 6万円 | 1台 | 6万円 |
| 合計 | - | - | 13.7万円 |
NVR専用機方式のコスト
比較のため、NVR専用機を使った場合のコストも試算しました。
TP-LINK VIGI純正NVR(4台構成)
| 項目 | 単価 | 数量 | 小計 |
|---|---|---|---|
| カメラ(VIGI C340W) | 2.2万円 | 4台 | 8.8万円 |
| NVR本体(8ch) | 3.5万円 | 1台 | 3.5万円 |
| HDD(2TB) | 1万円 | 1台 | 1万円 |
| モニター | 3万円 | 1台 | 3万円 |
| 合計 | - | - | 16.3万円 |
汎用ONVIF NVR(4台構成)
| 項目 | 単価 | 数量 | 小計 |
|---|---|---|---|
| カメラ(汎用品) | 2.5万円 | 4台 | 10万円 |
| NVR本体(8ch、Hikvision) | 5万円 | 1台 | 5万円 |
| HDD(2TB) | 1万円 | 1台 | 1万円 |
| モニター | 3万円 | 1台 | 3万円 |
| 合計 | - | - | 19万円 |
比較表
| 項目 | NAS録画 | VIGI純正NVR | 汎用NVR |
|---|---|---|---|
| 初期コスト(4台) | 17万円 | 16.3万円 | 19万円 |
| 拡張性 | ◎ | △ | ○ |
| 他用途活用 | ◎ | × | × |
| 使い勝手 | ◎ | ○ | △ |
| 安定性 | ○ | ○ | ◎ |
コスト面の考察
NVR純正の方が若干安いですが(約0.7万円差)、以下の点を考慮するとNAS録画方式の方が長期的にはコスパが良いと判断しました。
- iPadの汎用性(監視カメラ以外にも使える)
- NASとの統合(ファイルサーバー、バックアップなども同じ機器で)
- 拡張性の高さ(将来8台に増やせる、AI機能追加など)
- Surveillance Stationの高機能(業務用NVRに匹敵)
おわりに
自宅に防犯カメラを設置するにあたって、機種選定から導入方法の検討までを行いました。
今回決まったこと
- 録画方式: Synology NAS + Surveillance Station
- カメラ機種: TP-LINK VIGI C340W
- 台数: 3〜4台
- 接続: 無線LAN(2.4GHz帯で実機検証予定)
- 総コスト: 約13.7〜17万円
次のステップ
- カメラの購入
- 2.4GHz帯での実機検証
- Surveillance Stationの初期設定
- カメラの設置と動作確認
次回は、実際にSurveillance Stationのセットアップを行った記録を記事にする予定です。 帯域検証の結果も含めて、また報告したいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。